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最高裁判所第二小法廷 昭和34年(あ)1156号 決定

主文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中三〇日を本刑に算入する。

理由

弁護人清水正雄および被告本人の各上告趣意は、いずれも事実誤認の主張をいでないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(なお、たとえ価格相当の商品を提供したとしても、事実を告知するときは相手方が金員を交付しないような場合において、ことさら商品の効能などにつき真実に反する誇大な事実を告知して相手方を誤信させ、金員の交付を受けた場合は、詐欺罪が成立する。そして本件の各ドル・バイブレーターが所論のようにD型で、その小売価格が二、一〇〇円であったとしても、原判決の是認した第一審判決が確定した事実によると、被告人は判示堀内重夫外一六名に対し判示のごとき虚構の事実を申し向けて誤信させ、同人らから右各ドル・バイブレーターの売買、保証金などの名義のもとに判示各現金の交付を受けたというのであるから、被告人の本件各所為が詐欺罪を構成するとした原判示は正当に帰する。また、記録を調べると、原判決が、証第四号のドル・バイブレーターは三A型である旨の第一審証人井上未安の供述を引用したのは失当であるが、本件に則してみると、右の瑕疵に刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。)

よって同四一四条、三八六条一項三号、刑法二一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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